TeX の応用2 ― emath
1. 初めに
emath とは、初等数学(高校以下の数学)プリント作成(La)TeXマクロ集です。特に、初等幾何や座標の図が描けるのは大きいと筆者は思います。その機能の全貌を語ることは、筆者にはできませんが、少なくとも言えるのは、中学入試の算数から高校の数Cまでをはば広く網羅していることです。その秀逸さは、例えば「数学ガール」で使われているほどです。学校や塾といった教育現場で使用されている先生もいらっしゃるようです。改めて、利点を代表的なもののみ挙げてみます。
・分数の分母と分子が、見映えのよい位置に変更されている
・座標平面, 座標空間の図が描ける
・list系環境に図を回り込ませることができる
インストールから使い方まで、emath関連のことは作者に聞くのが一番です。ここでは、筆者なりのインストール方法を紹介したいと思います。
2. emath のインストール
2.1 前提条件
emath は、Mac や Unix にもインストールできるそうですが、本稿では Windows へのインストールに限定させていただきます。こちらで述べたことと少し被りますが、前提条件を確認したいと思います。
・OSは Windows32bit ・ディスクドライブは C: のみ。 ・「コントロールパネル」 > 「フォルダオプション」 > タブ「表示」 > 詳細設定 で次のように設定する。 「すべてのファイルとフォルダを表示する」 -> チェックオン 「登録されている拡張子は表示しない」 -> チェックオフ ・emathインストーラーを格納しておくフォルダとして、 C:\Installer2 を作成しておく。 ・emathドキュメントを格納しておくフォルダとして、 C:\emath_example\intro_emath を作成しておく。 |
2.2 免責事項
emathサイトに書かれている免責事項を、ここで確認しておきます。
・emathは無保証である
・emath配布ファイルの転載、再配布をしない(ただし、丸ごとパックは転載、再配布それぞれ可)
・emathに関する質問は、emath掲示板に質問する。TeX Q & A , TeXフォーラム などに質問しない。
2.3 インストールの流れ
emathインストーラーは、主に
・丸ごとパックemathf051107c.zip
・修正パック121104e.zip
・実験版130812-sty.zip
の3つです。修正パックは丸ごとパックの修正のみを集めたフォルダであり、実験版は修正パックの修正のみを集めたフォルダです。修正パック,実験版は単独では機能しません。
丸ごとパックだけでは、emathドキュメントをはじめ配布ファイルがタイプセットできないことが多いです。したがって、丸ごとパック + 修正パック + 実験版を順に一気に上書きインストールしていきます。
これら3つは、エンコードが JIS で配布されています。メモ帳や WinShell で読めるように、shift-JIS に変換します。
グラフ描画や作図不可能な図形の描画のために、数量計算を必要としますが、TeX はそれほどの容量を持ち合わせていません。そこで、emath では Perl との連携をします。
emath が用いる、W32TeX に納められていない styファイルなどは、もう一つのtexmf という安全な場所にインストールします。
2.4 ダウンロード
�� 丸ごとパック emathf051107c.zip, 修正パック121104e.zip, 実験版130812-sty.zip を、フォルダ C:\Installer2 にそれそれダウンロード、展開し、元のzipファイルは削除する。後二者のダウンロードについては、該当ページをご覧ください。
�� C:\Installer2\emathf051107c 内の doc.zip, pdf.zip, sty.zip をそれぞれ展開し、元のzipファイルは削除する。
�� C:\Installer2\emathf051107c\doc\emathAe\test\zitute.zip を展開し、元のzipファイルは削除する。
�� C:\Installer2\121104e 内の doc.zip, perlpl.zip, sty.zip をそれぞれ展開し、元のzipファイルは削除する。
�� C:\Installer2\121104e\doc\emathAe\test\zitute.zip を展開し、元のzipファイルは削除する。
2.5 エンコード変換
2011年3月6日(日)から W32TeX に装備されるようになった C:\usr\local\bin\nkf.exe を利用します。
�� メモ帳に次の記述をコピペし、C:\Installer2\to_sjis.bat として保存する。
|
for /r %%a in ( *.txt *.tex *.sty *.pl *.def ) do nkf --overwrite -c -s %%a pause |
�� C:\Installer2\to_sjis.bat をダブルクリックする。⇒ 丸ごとパック, 修正パック, 実験版内の全ての txt, tex, sty, defファイルがshift-JISにエンコード変換される。この変換により、ファイルのタイムスタンプは変わらない。
�� 何かキーを押す。⇒ コマンドプロンプトが閉じられる
�� styファイル(例えば C:\Installer2\emathf051107c\sty\arhako.sty)を右クリック > プロパティ > 変更 > 「WinShell」を選択
�� txt, tex, sty, defファイルがメモ帳やWinShellで開け、日本語が読めることを確認してみましょう。
2.6 インストール
�� C:\Installer2\emathf051107c\sty 内のファイル全てを C:\musixtexmf\tex\platex\emath にコピーする。
�� C:\Installer2\121104e\sty 内のファイル全てを C:\musixtexmf\tex\platex\emath に上書きコピーする。
�� C:\Installer2\130812-sty 内のファイル全てを C:\musixtexmf\tex\platex\emath に上書きコピーする。
次に、Perl との連携を行います。
2.7 Perl との連携
Windowsであれば、ActivePerl をインストールします。
�� ActivePerl-5.16.3.1603-MSWin32-x86-296746.msi を C:\Installer\misc にダウンロードし、実行→インストールする
�� C:\Installer2\121104e\perlpl 内の4ファイルを C:\Perl\lib にコピーする。
2.8 emath に必要な他のstyファイルのインストール
emathに必要な他のstyファイルなどの一覧が、emathサイトに載せられています。
�� それらを C:\Installer2\emath_other にダウンロードする。
�� styファイルなどは C:\musixtexmf\tex\platex\emath_other に、mfファイルなどは C:\musixtexmf\fonts\source にコピーする。
|
※ dtxファイルとinsファイルで配布されているパッケージについて: dtx, insファイルで配布されているパッケージは、一度 platex でコンパイルする必要があります。 例えば、esvect の場合: �� esvect.dtx, esvect.ins を C:\Temp にダウンロードする。 �� コマンドプロンプトから、次を実行する。⇒ mfファイル, styファイルなどが作成される
�� 作成されたファイルの内、mfファイルは C:\Installer2\emath_other\esvect\source に、styファイル,fdファイルを C:\Installer2\emath_other\esvect\tex にコピーする。 �� C:\Temp 内を削除する。 �� C:\Installer2\emath_other\esvect\source 内を C:\musixtexmf\fonts\source\esvect に、 C:\Installer2\emath_other\esvect\tex 内を C:\musixtexmf\tex\platex\emath_other\esvect にコピーする。 |
2.9 emathドキュメントファイルの作成
emathドキュメントファイルを作成します。このことは、emath がインストールできたことの確認も兼ねています。目次、リンク付きのpdfファイルにもできます。
�� C:\Installer2\emathf051107c\doc を C:\emath_example\intro_emath にコピーする。
�� C:\Installer2\121104e\doc 内を C:\emath_example\intro_emath\doc に上書きコピーする。
�� C:\emath_example\intro_emath\doc 内のファイルを、ドキュメントごとにひとまとめにする。
<例>
C:\emath_example\intro_emath\doc\emath 内の sample.tex, temp.tex, フォルダexample を C:\emath_example\intro_emath\doc\emath\sample に移動する。
| ※ 修正パックドキュメントの編集 �� 以下のファイルのプリアンブルに \usepackage{emathOld-kasen} を追加する。 ・C:\emath_example\intro_emath\doc\emath\sample\sample.tex ・C:\emath_example\intro_emath\doc\emathPs\samplePs\samplePs.tex ・C:\emath_example\intro_emath\doc\emathPs\samplePs-cmyk\samplePs-cmyk.tex �� 以下のファイルのプリアンブルに書かれている \usepackage{epic,eepic} を \usepackage{emathPh} に置換する。 ・C:\emath_example\intro_emath\doc\emathPs\samplePs\samplePs.tex ・C:\emath_example\intro_emath\doc\emathPs\samplePs-cmyk\samplePs-cmyk.tex |
ここからは、\usepackage[dvipdfmx]{hyperref} による目次、リンク付きのpdfファイルを作成する方法を紹介します。
�� 「\documentclass{…}」の次の行に
|
\usepackage[dvipdfmx,bookmarks=true,bookmarksnumbered=true,colorlinks=true,linkcolor=blue,pdfborder={0 0 0}]{hyperref} \usepackage{atbegshi} \AtBeginShipoutFirst{\special{pdf:tounicode 90ms-RKSJ-UCS2}} %SJISの場合 |
を追加する。
「\usepackage{graphicx,color}%」を
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx,color}% |
にする。
「http://emath.s40.xrea.com/」を
|
\href{http://emath.s40.xrea.com/}{http://emath.s40.xrea.com/} %http://emath.s40.xrea.com/ |
にする。
�� C:\emath_example\intro_emath\doc 内の各texファイルをタイプセットする。
<例>
|
C:\emath_example\intro_emath\doc\emath\sample>platex -shell-escape sample C:\emath_example\intro_emath\doc\emath\sample>platex -shell-escape sample C:\emath_example\intro_emath\doc\emath\sample>mendex -shell-escape sample C:\emath_example\intro_emath\doc\emath\sample>platex -shell-escape sample C:\emath_example\intro_emath\doc\emath\sample>dvipdfmx -f msmingoth sample |
2.10 再インストール
実験版は、不定期に更新されます。実験版******sty.zip(** ** **は年月日)の再インストールは次のようにします。
�� 実験版******sty.zipをフォルダ C:\Installer2 にダウンロード、展開し、元のzipファイルは削除する。
�� C:\Installer2\to_sjis.bat を C:\Installer2\******sty に移動する。
�� C:\Installer2\******sty\to_sjis.bat をダブルクリックする。⇒shift-JISにエンコード変換される
�� C:\Installer2\******sty\to_sjis.bat を C:\Installer2 に移動する。
�� C:\Installer2\******sty 内を C:\musixtexmf\tex\platex\emath に上書きコピーする。
�� 問題がなさそうなら、C:\Installer2 内の前実験版を削除する。