階段

 

昼下がりの薄暗い廊下の左に、ふと階段がある。誰も登らない階段なのだろう。中華風の意匠が施されていて、その天井には明るい光が差し込んで見える。

 

曲がらなければその階段を登ることもなかったのに。普通は廊下を歩いていくだけだ。ただ、そこに歩いていくのも悪くはない人生とは思う。その階段を登ったら決して後ろは見えないのだと僕は、思う。誰かが登ったとき、その登っている様子を僕は後ろから見ることができる。

 

唯一人佇む私、廊下には手垢が見られ、多くの人が過ぎ去った名残が見える。廊下の向こうには何か奥まったものがあり、暗くてよく見えない。僕はそこに包まれて、真っ直ぐとは言えないかもしれないけれど歩いていくような気がした。

 

 

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